和室のリフォームや新築の床選びで、「フローリング」にするか「畳」にするかは、予算を大きく左右する悩みどころです。結論から申し上げますと、工事をする時点での初期費用(イニシャルコスト)だけで比較すれば、「畳」の方が安く済むケースが一般的です。
しかし、家は建てて終わり、リフォームして終わりではありません。10年、20年と住み続ける中でかかる費用を含めると、その評価は逆転することがあります。まずは、目先の工事費の違いについて、プロの視点で解説します。
【目次】
- 結論|「フローリング」vs「畳」どっちが安い?(初期費用編)
- 維持費|20年住むならどっち?(ランニングコスト編)
- リフォームの罠|「畳からフローリング」はなぜ高くなる?
- 機能比較|価格以外のメリット・デメリット
- 自社紹介|亀谷工務店が提案する「寒くないフローリング化」
- まとめ|目先の安さより「将来の快適さ」で選ぼう
■結論|「フローリング」vs「畳」どっちが安い?(初期費用編)

・材料費と施工費の相場観
一般的なグレードで比較した場合、畳(イグサ)の新調は1畳あたり1万円〜2万円程度が相場です。一方、フローリングも複合フローリング(合板)であれば材料費は安価ですが、施工にかかる手間(大工工事費)が畳よりも割高になる傾向があります。特に「置くだけ」で済む畳に対し、フローリングは一枚一枚を釘や接着剤で固定し、巾木(壁際の部材)を設置する必要があるため、職人の拘束時間が長くなり、それが費用に反映されます。
・グレードによる価格の逆転現象
「畳の方が安い」というのはあくまで普及品同士で比べた場合の話です。例えば、国産の高級イグサや、デザイン性の高い「縁なし畳(琉球畳など)」を選ぶと、1畳あたり3万円を超えることも珍しくありません。逆に、フローリングでも安価なシートフロアを選べば費用は抑えられます。つまり、「何を選ぶか」によって価格は簡単に逆転するため、一概に「こっちが絶対に安い」とは言い切れないのが現実です。
■維持費|20年住むならどっち?(ランニングコスト編)

初期費用では畳に分があることが多いですが、長く住む家としての「トータルコスト」で考えると、話は変わってきます。ここが多くの施主様が見落としがちなポイントです。メンテナンスの手間と費用を20年スパンで比較してみましょう。
・畳にかかる「表替え」と「裏返し」の維持費
畳は植物(イグサ)でできているため、呼吸をする素晴らしい素材ですが、その分消耗も早いです。一般的には3〜5年で「裏返し(表面を裏返して使う)」、7〜10年で「表替え(ゴザ部分の交換)」、15〜20年で「新調(土台ごとの交換)」が必要になります。これらを都度業者に依頼すると、20年間で数回〜十数万円の出費が発生します。これを怠ると、イグサが服に付着したり、ダニの温床になったりと、生活の質が下がってしまいます。
・フローリングは「ほぼ0円」か「メンテナンスフリー」
一方、近年のフローリング(特にシート系やウレタン塗装品)は、ワックスがけ不要の「ノンワックス仕様」が主流です。日常の掃除機かけや拭き掃除だけで済み、特別なメンテナンス費用はほとんどかかりません。無垢材の場合はオイル塗装などのケアが必要ですが、DIYで安価に行えます。20年という長期スパンで見れば、維持費のかからないフローリングの方が、トータルでの出費は安く抑えられる計算になります。
■リフォームの罠|「畳からフローリング」はなぜ高くなる?

「今ある和室を洋室にしたい」というリフォームの場合、「フローリングの方が維持費が安いなら、リフォームも安く済むのでは?」と考える方がいらっしゃいます。しかし、ここにはリフォーム特有の「構造上の問題」があり、見積もりを見て驚くケースが少なくありません。
・ただ板を敷くだけでは済まない「高さ調整」
畳とフローリングでは「厚み」が決定的に違います。一般的な畳の厚さは約55mm〜60mmですが、フローリング材は12mm程度しかありません。畳を撤去してそのままフローリングを張ると、約40mm〜50mmもの段差(くぼみ)ができてしまいます。これを解消するために、大工が下地(根太や合板)を組んで高さを上げる「嵩上げ(かさあげ)工事」が必要になります。この木工事の手間と材料費が加算されるため、単に畳を入れ替えるよりも費用は高くなります。
・断熱工事をしないと「極寒」の部屋になるリスク
畳にはそれ自体に厚みがあり、断熱効果(冷気を遮断する役割)を持っています。しかし、それを撤去して薄いフローリングにする際、床下の断熱材を入れ忘れたり、ケチったりすると、冬場に底冷えする「極寒の部屋」になってしまうリスクがあります。「安い見積もり」を出してくる業者の中には、この断熱工事を含んでいない場合があるため注意が必要です。後から「寒くて住めない」と後悔しないためには、見えない床下の断熱工事もしっかり予算に組み込む必要があります。
■機能比較|価格以外のメリット・デメリット

「安いかどうか」も大切ですが、毎日暮らす家ですから「快適かどうか」はもっと重要です。フローリングと畳、それぞれの機能的な特徴を知ることで、ご自身のライフスタイルにどちらが合っているかが見えてきます。
・掃除のしやすさとダニ・カビ対策
衛生面で比較すると、圧倒的にフローリングに軍配が上がります。飲み物をこぼしてもすぐに拭き取れますし、掃除機もスムーズにかけられます。一方、畳はイグサの隙間にゴミが入り込みやすく、湿気を吸いやすいため、条件によってはカビやダニの温床になりやすいデメリットがあります。ペットを飼っている方や、アレルギーを気にされる方には、掃除が簡単なフローリングが選ばれる傾向にあります。
・防音性と足ざわりの優しさ
こちらは畳の圧勝です。畳にはクッション性があり、足音が響きにくいため、マンションや2階の部屋に適しています。また、そのままゴロンと寝転がれる柔らかさは、小さなお子様やお年寄りがいるご家庭にとって大きな安心材料です。フローリングは硬く、物が落ちる音や歩く音が響きやすいため、防音対策(遮音フローリングを選ぶなど)が必要になる場合があります。
・「寒さ」の感じ方の違い
意外と見落とされがちなのが「体感温度」です。木材やイグサは熱伝導率が低いため、触れたときにヒヤッとしにくい素材ですが、合板フローリングは冬場に冷たさを感じやすい特徴があります。特に「畳からフローリング」にリフォームした場合、「部屋が寒くなった」と感じる方が多いのはこのためです。フローリングを選ぶ際は、床暖房を導入するか、無垢材のような温かみのある素材を選ぶか、あるいは床下の断熱を強化するといった対策がセットで必要になります。
■自社紹介|亀谷工務店が提案する「寒くないフローリング化」

私たち亀谷工務店は、横須賀市馬堀海岸に拠点を置く工務店です。海や山に近い横須賀の気候を知り尽くしているからこそ、単に「畳を剥がして板を張る」だけの工事はいたしません。お客様がリフォーム後に「寒くて後悔した」とならないよう、見えない部分の施工にこだわっています。
・断熱施工を標準としたリフォーム提案
先ほどもお伝えした通り、畳からフローリングへの変更は、床下の断熱性能が低下するリスクがあります。私たちは、解体時に床下の状態をプロの目で確認し、断熱材が入っていない、あるいは劣化している場合には、最新の断熱材への入れ替えをご提案します。床の表面だけでなく、床下から冷気をシャットアウトすることで、フローリングでも冬にスリッパなしで過ごせるような快適な住環境をつくります。
・大工技術によるバリアフリー化と和洋折衷
「和室の雰囲気は残したいけれど、掃除は楽にしたい」といったご要望にも、柔軟に対応いたします。例えば、部屋の一部だけをフローリングにしてベッドを置けるようにしたり、隣接するリビングと段差なくつなげて広々とした空間にしたりと、自由な設計が可能です。これは決まった型にはめるだけの業者ではなく、自社の大工が手仕事で造作を行う亀谷工務店だからこそできる提案です。
■まとめ|目先の安さより「将来の快適さ」で選ぼう
「フローリング」と「畳」、どちらが安いかという問いへの答えは、「初期費用なら畳、20年の維持費ならフローリング」というのが一つの目安です。しかし、本当に大切なのは金額の多寡だけではなく、ご家族がその部屋でどう過ごしたいかというビジョンです。
「寝転がってくつろぎたい」なら畳の維持費は必要経費ですし、「掃除の手間を減らして清潔に保ちたい」ならリフォーム費用をかけてでもフローリングにする価値があります。迷われている方は、ぜひ一度亀谷工務店にご相談ください。現在の家の状況とご予算に合わせ、プロの視点で最もコストパフォーマンスの高いプランをご提案させていただきます。

